野党共闘は崩壊したのか
――データから見る共産党候補大幅増の影響【2024年衆院選分析】
2024年衆院選では、日本共産党が他野党に遠慮せずに多数の候補を擁立したことが注目された。従前の協力関係が崩壊したことから、この選挙で立憲民主党が議席を伸ばすことは厳しいとの見方もあった。
しかし、蓋を開けてみれば立憲民主党は大幅に議席を伸ばし、自民党と公明党の与党は衆院過半数を失う結果となった。このような結果を受け、一部からは野党共闘は意味がなかった、さらには逆効果だったのだとの声も上がった。
もっとも、こうした一部の議論は、数字的な根拠を全く伴わないものである。計量的な評価が可能にもかかわらずそれを行わないのは、自己に都合の良い印象論を流布したいがためだろう。
筆者がいくつかの分析で示したように、この消極的かつ限定的な野党間の選挙協力は、2021年の前回衆院選小選挙区における野党候補の議席増や得票増に貢献していた[i]。しかし「一部」は、この選挙で野党が過半数を獲得できなかったこと、あるいは立憲民主党が「現有議席」を下回る獲得議席となったことを理由に、今回と同様に野党共闘は逆効果だと主張していた。
残念なことに、マス・メディアはこうした一部の声を検証せずに広めている。政界関係者も適切な評価、判断ができていない可能性がある。そこで今回は、2024年衆院選での共産党の候補擁立状況が立憲民主党の選挙結果に与えた影響について基本的なデータから順次確認し、その意味について論じていきたい。
2024年衆院選の野党競合パターン
まず、野党共闘の定義について簡単に述べておく。筆者による定義は、「与党への対抗手段として採用された積極的/消極的な候補者調整を基本とした野党間の不完全な選挙協力」である。2021年衆院選で共産党は、立憲民主党等の他の野党に対し、自党候補を擁立しないことによりその集票を手助けしていた。これが片務的で不十分な協力関係であったことは、前々回のニュースレターで述べた通りである。
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