「若者の高市人気」という集団幻想【2026年衆院選分析】

マス・メディアなどでは、高市自民党が若者の支持を受けて2026年衆院選に勝利したとされている。しかし、出口調査による自民党得票率は、若者ではなく高齢者で伸びていた。
菅原琢 2026.04.20
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 就任以来、高市首相は若者に人気だという説が広く語られています。2月の衆院選の自民党圧勝要因にもこれは挙げられています。しかし、こうした言説は適切な根拠によって支えられているわけではありません。

 多くの記事では、マス・メディアの世論調査で得られる内閣支持率か、衆院選の出口調査の自民党比例区得票率を根拠であるかのように伝えています。ただし、これらのデータは適切に理解され、分析されているとは言い難いです。

 それにもかかわらず、これらの数字の高低が「人気」なるものを示しているという前提の下で、特殊なエピソードや識者の見解を盛っただけの報道が溢れています。このような報道に、現象を適切に理解して説明しようという意図はありません。そうした軽率なデータ解釈と論者のお気に入りの「エピソード」が相互に補強し合い、SNSの政治通界隈を含む多様な論者や媒体によって「高市首相が若者に人気だ」と集団幻想に陥っているのが、現代日本の政治評論の水準です。

 今回のニュースレターでは、マス・メディアの出口調査結果を分析し、「若者の高市人気」と呼ばれる現象の選挙での実態を確認していきます。まず、簡単に年齢層別の傾向から確認してみましょう。

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岸田内閣からさらに下がった若年層での自民党得票率

 毎日新聞の「解剖・高市現象」と題するシリーズ企画では、次に引用するように2月の衆院選における自民党比例区得票率の傾向を、若年層の高市人気の根拠としていました。

――共同通信社の投開票日の出口調査によると、比例の投票先に自民党を選んだ10代は42%、20代は36%と政党別でトップでした。

「Z世代は高市首相の人生に共鳴? 藤田結子氏が語る若者の過酷な現実」『毎日新聞』2026年3月5日配信

共同通信が衆院選投開票日に行った出口調査では、10~20代の投票先は若年層ほど中道の割合が低く、自民党の浸透が顕著だった。

「高市首相は「反権威」の象徴? 停滞を生きる若者が衆院選で見たもの」『毎日新聞』2026年3月5日配信

 これらの記事では、記者側のこうした数字理解を事実としたうえで、識者による議論が展開されています。同じシリーズの他の記事でも、特にデータを示してはいなくとも、同様に若者の間で高市首相が人気であり自民党が大勝したことを事実としてさまざまな議論が展開されています。

 今回は、これら「若者の高市人気」の背景を説明する議論の当否について述べることはしません。そのかわり、こうした議論が前提としている比例区での自民党得票率に関心を向けます。前提が間違っていれば後続の議論は存在しないのと同じですからね。

 ところで、図表1は朝日新聞に掲載された出口調査における年齢層別の比例区自民党得票率を示しています[1]。この図に示されているA、B、Cの折れ線のうち、どれが2026年衆院選かわかるでしょうか? なお、他の2本は2021年と2024年の衆院選となります。

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  • 「若者」は投票者に限定されない
  • データが示すのは「老人の高市人気」
  • 集団幻想に陥る政治報道と政治言論

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